• HOME
  • 過敏性腸症候群

過敏性腸症候群

症状の原因となる腸炎などの病気がないにもかかわらず、下痢や便秘などの便通異常を主体とする腹痛や腹部不快感が 慢性的に繰り返される病気のことです。原因が大腸を中心とした消化管全体の機能異常である可能性が高く、過敏性腸症候群という病名がつけられました。「腸の反応が刺激に対して過敏となっている」「自律神経、腸内細菌の異常」 などが関係するといわれていますが確定的なことは解っていません。もともと消化管の動きは健康人でもストレスなどにより影響されやすいですが、過敏性腸症候群の患者様は少しの刺激で便通異常や腹痛などが起こりやすいことが分かっています。
食事がきっかけで腹痛が起こったり、物理的な刺激に反応して下痢や便秘、腹痛が起こることもあります。

過敏性腸症候群の病型

過敏性腸症候群の便通異常には下痢型、便秘型、下痢と便秘の交代型に分けられます。
下痢型は若い人に多く、通勤や通学の途中で急に腹痛が出現し何度もトイレに駆け込むという症状が典型的です。便秘型は女性に多く、年齢とともに増加しいつも残便感が残る症状が出ることが多いです。便秘型の場合は単純に便秘による症状の場合もあり、通常の便秘治療で改善することも多いです。

過敏性腸症候群の診断基準

過敏性腸症候群の確定診断にはこれまで様々な診断基準が使われてきましたが、国際的にはRome委員会による診断基準が使用されています。

6か月以上前から症状があり、過去3か月間は「月に3日以上にわたって腹痛や腹部不快感が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上がある」という基準を満たしていること

  1. 排便により症状が軽減する
  2. 発症時に排便頻度の変化がある
  3. 発症時に便形状の変化がある

ただ、この診断基準はあくまで参考に過ぎず、検査をしても原因が見つからず、症状が持続し困っている場合は診断基準を満たさずとも治療適応になります。

過敏性腸症候群で注意すること

過敏性腸症候群で特徴的な便通の異常や腹痛という症状は、他の消化器系疾患でもおこります。また、消化管の異常はないが、他の部位の病気のため便通異常や腹痛の症状がある場合もあります。このような病気の中には悪性疾患も含まれており、早く治療しないといけない場合もあり、過敏性腸症候群の典型的な症状がある場合でもほかに病気がないかどうかしっかり検査をしないといけません。
血便や貧血の進行、体重減少、などの所見がある場合、また50歳以上の方、過去に大腸の病気になったり、家族に大腸がんの方がいるなどの危険因子がある患者さんに対しては大腸内視鏡検査が必要です。
若年者で下痢が頻回の場合はクローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患との鑑別が必要になることもあります。
器質的な疾患が除外できれば、過敏性腸症候群の治療を行います。

過敏性腸症候群の治療

過敏性腸症候群の原因は様々な要因が関係しています。患者様の症状の程度、困っている程度も様々で、治療の進め方や目標の設定は個々の患者様と相談しながら立てていく必要があります。
まず、ストレスがかなりの要因を占める場合は可能な範囲でそれを取り除く、もしくは改善するように調整する必要があります。内服薬には様々な種類があります。
腹痛や下痢を繰り返すときは、鎮痙作用のある抗コリン薬、消化管機能調整薬のマレイン酸トリメブチンや、整腸剤、5-HT3受容体拮抗剤などの処方を行います。便の性状を改善する高分子重合体・ポリカルボフィルカルシウム(ポリフル、コロネル)は下痢にも便秘にも効果がありますが、すぐには効果がないため他の薬と併用して使っていく必要があります。
食生活、排便等の生活習慣の改善などが有効な場合もあり、個々の患者様のライフスタイルをお聞きして一緒に考えていきます。