胃潰瘍の『かいよう』とはただれるという意味で、胃の粘膜、内壁がただれる病気になります。胃酸やペプシンの働きが強まり内壁が消化されるためで、症状は、みぞおちの痛み、胸焼け、ゲップ、黒い便や貧血などで、原因は、ピロリ菌、解熱薬、ストレス、細菌・ウイルス感染、暴飲暴食などです。
以下の項目に一つでも当てはまると胃潰瘍の可能性があります。
近年の治療薬の進歩が目覚ましく、強力な胃酸分泌抑制薬(H2ブロッカー、プロトンポンプインヒビター)などの登場で治癒しやすくなりました。
しかし、再発しやすい特徴は改善がみられず、長年悩まれている方も多いかと思います。ピロリ菌保菌者の再発率は高く、投薬だけでなく、内視鏡検査によるピロリ菌検査と除菌など抜本的な治療が望まれます。
一般的に胃潰瘍は、ストレスに起因するものと捉えられ、強力な治療薬の登場も相まって、重篤な病気と考えられなくなってしまっていることに加え、みぞおちの痛みとの患者様からの訴えで胃潰瘍とされがちの傾向もあります。
しかし、胃潰瘍でみられる自覚症状はより重篤な病気でも見られる症状と同じであり、検査をせずに決めてかかると、後日取り返しのつかない結果になりかねません。胃については症状の進展が早い傾向があるため、自覚症状があってから潰瘍の治療を始め、なかなか治らず2〜3年たった後に内視鏡検査をして、そこで発見されても手遅れのケースも十分考えられますので、ご注意ください。胃潰瘍であることを確認するためではなく、より重篤な病気でないことを確認するために内視鏡検査を行い、胃潰瘍の治療を開始すべきです。
内視鏡検査では胃の内部は患者様もご一緒にご覧になりながら確認してただくことも可能です。
胃潰瘍の症状
是非一度、上記チェックリストもご覧ください。
少し詳しく解説します。
空腹時のみぞおちの痛みですが、
- 胃潰瘍→胃に食べ物が入ったころからでていくまでの間
- 十二指腸→早朝
となっております。
しかし、自覚症状のない人が多いのが実情です。他には、むねやけ、吐き気、嘔吐、食欲不振などです。進行すると出血することがあり、とても黒い便が観測されます。
胃潰瘍の症状で最も多いのは、やはりみぞおちの痛みです。食事を終えて時間が少し経過すると痛みが出てきます。潰瘍の活動期に起こりやすく、治癒期には症状は出ないことが多いです。
症状がひどい場合には出血し、便に血が混じることもあります。出血部位が上位ほど便として体外に排出される時間がかかりますが、血液に含まれるヘモグロビンの作用で、時間がかかるほど黒くなりますので、胃から出血していた場合は、大腸から出血した場合に比べ黒くなります。
高齢者の場合は胃潰瘍の出血が、狭心症や心筋梗塞のきっかけになることもあります。
胃潰瘍の原因
潰瘍の原因は、胃酸の消化作用が働きすぎて胃の内壁が損傷してしまうからです。胃は胃酸(塩酸や消化液)というとても強い酸性の液体を出しています。普段は摂取した食物の消化に寄与しているのですが、これが効きすぎて胃の粘膜まで消化してしまい、胃の壁が傷ついた状態になることです。
胃の粘膜を保護する働きと攻撃する力のバランスがくずれてしまうと、攻撃する側が優位な状況になります。
なお、どうして効き過ぎるかについては諸説というより複合的であると考えられるようになり、一概に言えない状況です。
かつてストレスが原因と考えられていました。胃酸の力と胃の内壁の強さのバランスがストレスや体調不良などによって崩れたためにおこると考えられていました。しかし、ピロリ菌が大きく作用しているのではないか見方も浮上してきました。胃潰瘍の患者様の7割~9割でピロリ菌が発見されていることから注目されています。
ただし、それでは日本に住む方のピロリ菌の除菌が進むと日本から胃潰瘍という病気自体がなくなってしまうことになるはずですが、そうともならないような気がします。除菌に成功しても、一定の再発率があるからです。除菌が日本の制度として大々的に行われるようになったのは近年、ここ数年のことで、除菌・治療後の長期間にわたるエビデンスの集積はこれからであり、疫学的な調査が待たれるところです。いずれにしても、原因としてはこれだ、とはっきりしたことが断言できないのが実情だと思います。
胃潰瘍には慢性と急性があり、慢性は円形で単発する傾向があります。急性の場合は、潰瘍が多発します。早期に治ることが多いですが、再発を繰り返すケースもあります。